『悪いことなのか?』

その問いに墓守は首を振る。
『……悪いことではない。それぞれ決別して選んだ道だ。ただ…中には違うものもある。これから先出会ったりもするだろう。』
『出会ったら、どうしたらいい?』
『………決して押し付けず、ただ受け入れることだ。さあもう行け…感化されては困る。』
『どうか、お気を付けて。』
『わかった。じゃあ最後に聞いてもいいか。』

僕はリュックにそれを戻し、渡された花をポケットにさす。

『ホシとはなにか知っているか?』
墓守は珍しく目を大きく開いて驚いたような顔をする。
『すまない。自分には…言っている意味がわからない。』
それを見た葬花屋はクスクスと楽しそうに笑う。
『私にとってホシは餞です。』
『そうか、ありがとう。』

地面に転がるそれを避けながら二人の前を通りすぎ、先に続く道を歩き出した。
相変わらずあいつは僕の歩く方へついてくるな、と思い一度立ちどまり空を見上げる。
『届きそうで憎らしいくらいが心地いい。』
後ろで声がする。
『あれのことか?』
『いや…何でもない。消そうとするのと消えるのでは、天と地ほどの差があると覚えているといい。』
『…わかった。』

振り返らず、不気味にそびえ立つ木々と共に墓地を後にした。