『ただ、持っているだけだ。こんなに綺麗でキラキラしているのに。外にも出さず閉ざされた空間に閉じ込めたままだ。』
『これは…』

葬花屋は口を開いたままそれ以上何も言わず、ゆっくりと目を閉じる。
墓守りは相変わらず表情を変えず、ただただ見つめる。
『どうしたんだ?』
『…………………。』
『ねえ、どうしたんだ?』
『昔はよく、こんな世界に花なんて不要だと私は思っておりました。』
『背が伸び月日を重ね視点が変わるにつれ…どうしてこんなにも世界は暗くて重くて鉛臭いのだろうと思う。』

墓守は静かにそう言う。
闇色の瞳のなかで映ったそれがきらきらと静かに輝いている。
不思議な感じだ。
どこか見覚えのあるような、どこかで出会っているような。

『これを、お持ちになって下さい。』
葬花屋は僕のもう片方の空の手を取り、そっと一輪の黄色い花を握らせる。
『これは葬花ではないのか?』
『はい、でも貴方にはただの花です。』
そう微笑み僕の手を優しく握る。
手は暖かいものと知った。
『…………精々、壊したりなくさないようにすることだ。』
『もう墓守さん意地悪言わないでくださいな。』
墓守は興味ないというようにそっぽを向く。
『……意地悪じゃない。よく…あることだ。だから墓守と葬花屋が存在するんだ。』