「オーロラってすごくきれいなんだね。みんな街に光が降ってきてから大騒ぎさ。これで街は安泰だ、とか言ってね。僕はそんなことより、光がきれいすぎてずっとどきどきしてた。何か素敵なことが起きるんじゃないかって。」


クルドは、オーロラを見上げながら言いました。ちょうど光の粒が、風になびいて飛んでいきました。

「ねぇ、旅立つ時の気分ってどんなだい?僕ね、ほんとは旅に出たいんだ。いろんや街や景色を見てみたい。」

彼は視線をすっと落として、海を見ました。彼は何を見ているのでしょう。

「旅立ちの時は、そうね、なんだか落ち着かない気分。そわそわして、少し不安になるけど、でも行かなくちゃいけないっこと、ちゃんと分かるの。

そう…行きたいっていうより、行かなくちゃいけないって感じ。そうする以外に生きる術がないから。


でも私ね…ほんとは光の無い世界を歩いてみたい。そこに何があるのか知りたい。」



私はついに口に出してしまいました。一族の人が側にいたら、間違いなくかんかんになって怒るでしょう。それくらい、不謹慎なことなのです。


オーロラは私たちの生きる道標

オーロラの無い世界など、私たちにとっては想像もつかない世界


私たちはその世界を恐れ、遠ざけてきました。私の生まれるずっと前から。