「携帯も持ってないの?」
また玲奈が、水を差すような
言い方をしたので、俺は
咄嗟にフォローをした。
「まあ、携帯なんて、まだ
持ってない人もいるしな。
俺のスマホでよければ
貸すよ。番号は?」
「それって、電話なんですか?!」
「え?そうだけど…」
マチさんは、携帯電話に、
ものすごい勢いで、聞いてきた。
まるでダイヤモンドでも見るような
目だ。そんなに珍しいものなのだろうか。
いや、みんな携帯は、持っているだろう。
「この鏡みたいなものが…電話ですか。」
「鏡に見えるのか?これが。」
「こんなものが、世の中に
出ていたなんて…私、全然
知りませんでした。無線ですか?
すごいなあ。でも…使い方が
わからないです。」
「今時、使い方もわからない
若者なんて珍しいわね。」
玲奈の言うとおりだ。
マチさんは、何歳なのだろうか。
「そんなことより、ここは
どこですか…?」
「え、東京だけど。」
「東京なわけないですよ。
東京には、あんなに高い建物
なんか、ありませんよ。
こんなに賑やかな場所では
ありません。」
マチさんと会話していると、
全く話がかみ合わない。
どうしたものか。
彼女は本当に、一体何なのだろう。


