俺とマチさんは、
近くの公園にいた。
マチさんは、ベンチに座って
塞ぎこんでいる。
俺は、何も言葉を
かけてあげられない。


「望さん。」
「ん?」
「私は戦争で死ぬって
 言っていましたね。」
「ああ…。」


おばさんが、そんな事を言っていた。
マチさんが、そんなことを
知ってしまったら、
余命を宣告されるのと同じだ。


「なんだか、余命を宣告された
 みたいですよね…。」


はは、と薄笑いを浮かべて
言うマチさん。
笑いごとではない。
それなのに、マチさんは笑う。


「でも、シズ姉さんは、生き延びれた
 みたいですし、良かったです。」


俺がマチさんの立場だったら、
泣くに決まっている。
だって、もう若くして死ぬことが
決まっているから。
マチさんは、こんなときに、
強がっているのだろうか。
泣く事を我慢して笑うのは、よくない。