セピア色の境界線




「ん、電話?」


そのとき、俺の携帯が鳴った。
こんなときに誰だと思いながら
携帯を手に取る。


「あ、玲奈からだ!」
「なんだって!?」


電話の相手は、なんと玲奈だった。
俺は震える手で、なんとか
電話に出た。


「もしもし、玲奈か!?」
「あ…よかった、つながった。」
「玲奈、今どこにいるんだ!
 悟もマチさんも俺も心配して」
「ごめんね。昨日は。マチさんにも
 謝っといて。ひどいこと言ったから。」


やけに玲奈が素直だ。
どうかしたのだろうか。
とにかく電話がつながってよかった。


「もうマチさんも怒ってない。
 迎えに行くから、今玲奈
 どこにいるんだ。」
「今、防空壕の中。」
「は?」
「達宗さんも一緒よ。」


達宗…?それって俺の夢の中に
でてきた名前。そしてマチさんの
思い人の名前だ。


「玲奈、お前まさか…」
「そう。そのまさか。自分でも
 信じられないけれど、
 私は、今、昭和時代にいるの。」


昭和時代。
信じられないが、
やはりマチさんと玲奈は
時代ごと入れ替わったようだ。