「ご、ごめんなさい。」
「だいたい、あんたが望の
 前に現れなければ
 私は…私は…」


涙で、そのあとの言葉が
言えないのか、玲奈は
言葉を詰まらせた。


「玲奈、落ちつけよ。」
「あんたが望を奪ったのよ!
 どうして私じゃなくて
 あんたなのよ!」
「…」
「もうあんたの顔なんて
 見たくないわ!
 早く元の場所へ
 帰りなさいよ!」


俺も流石に今の言葉は
ひどいと思い、
仲裁に入った。


「玲奈も、言いすぎだぞ。
 マチさんだって、帰りたくても
 帰れないんだよ!」
「あら、そうだったわね。
 じゃあ私があんたの前から
 消えるわよ!」


玲奈が大きな声で叫んで
突然走りだしてしまった。


「玲奈さん!」
「マチさん、今はそっと
 しておいた方がいいかも。」
「そうですよね。」



しかし、玲奈は一向に
俺たちの前に現れなかった。