考えてみれば、マチさんは何のために
未来へタイムスリップしたのだろう。
そもそもタイムスリップだなんて
漫画や小説の世界でしか、
ありえない話なのだが。
「この世界へ来る前の記憶は
残っているのよね?」
「はい。前にも言いましたが、
防空壕の中にいました。」
「覚えているのはそれだけ?」
「いや…まだあります。晴れた東京の空に
たくさんの飛行機が飛んでいて、
たくさんの焼夷弾を落としていきました。
その空襲から逃げるために、
私たちは走って防空壕の中へ逃げました。」
マチさんが、ようやく
出来事を思い出してくれた。
“東京の空に飛行機”
“焼夷弾”“空襲”という単語が
出てきて、素早く反応したのは玲菜だった。
「それって三月十日の…」
「はい! その日です。」
「それって、東京大空襲よ。
三月の十日に起きたの。
東京の中で一番大きな被害が
あったらしいわ。」
「東京大空襲…それが
未来の歴史に残っているのですね。」
今日は三月の十一日。
今日を入れて数えると、
二日前…丁度三月の十日に
タイムスリップしてきたことになる。
「マチさんが、ここに来た日は
三月十日なんだよ。その、
なんだっけ…東京の空襲が
きた日と同じだ。」
「東京大空襲の日に
タイムスリップしたなんて、
只事じゃないかもね。」
いつの日であれ、タイムスリップしている
時点で、もう只事ではないのだが。
とにかく未来へ来た日に何か
意味があると見て、俺たちは話を
進めることにした。


