様々な話をしているうちに、
マチさんのことをもっと知った。
マチさんは、俺たちと
同い年ということ。
そして俺たちのように学校に
行っているわけではなく、
学徒動員といって工場で
働かされているらしい。
そして何より、彼女の時代は
戦争真最中だということもわかった。
マチさんが話をしているうちに、
記憶も段々蘇ってきているようだった。


「戦争が終わったあとの未来では、
 東京がこんなに発展するのですね。」
「ああ。今は、ほとんど不自由ない
 暮らしだよ。ケータイなんか、
 一人一台ずつ持ってるよ。」
「戦争はいつ終ったんですか…?
 日本とアメリカ、どっちが
 勝ったのですか?」


マチさんは、少し焦るような
言い方で、俺たちに聞いてきた。


「それって聞いていいの?」
「知らない方がいいわよ。」
「…そうですよね。未来のことを
 知ることは反則ですよね。」


マチさんは意外にも、あっさり諦めた。
俺だったら未来のことを知りたくて
仕方がないだろうな。
しかしマチさんにとって、
知ってしまったら
ショックを受ける話かもしれない。
ましてや日本が負けたとわかれば、
どうなるか。

そういえば、授業中に
社会の先生が言っていた。
戦争中の人たちは、
「欲しがりません。勝つまでは」
というスローガンのようなものを、
常に心に植え付けていたと。
つまり、日本が戦争で勝てば、
欲しいものも自由も手に入ると
教育されたのだろう。
マチさんも、きっと同じように
思っているはずだ。
だから日本が負けたと
知れば絶望するだろう。
しかし、実際は、戦争に
勝っても負けても
悲しみしか残らないのだろう。


「まあ、そのことは聞かない方がいい。」
「それよりも、私が元の世界に戻れる
 方法を見つけなくちゃいけませんね。」
「ええ。それが先決よ。」