「まあ、そりゃ驚くよな。
 だってマチさんは、何らかの
 弾みで未来にタイムスリップ
 しちゃったんだから。」


普通ならば、ありえない話だが、
俺は不思議と、マチさんが
タイムスリップしてきたことを
すんなりと、受け入れた。


「タイムスリップって…望、
 それ本気で言っているのか?」
「そうよ。タイムスリップだなんて
 あるわけないでしょ。馬鹿みたい。」


悟も玲奈も、想像通りの言葉を
俺に言ってきた。
しかし、起きていることは、事実なのだ。


「だって、どう見てもマチさんは
 現代人じゃないだろう?」
「…」


沈黙を破ったのは、マチさんだった。


「タイムスリップ…それって、
 過去や未来を行き来することですよね?」
「ああ。そうだよ。」
「信じがたい話ですが、今の状況を
 見ると、おそらく…ここは、やはり
 未来のようですね。」


突然、未来という知らない場所に
飛ばされてしまったマチさん。
不安なのだろう。これから、マチさんを
どうすればよいのだろうか。
そう思っていると、悟が突然言い出した。


「帰るあてもないみたいだし
 マチさん。俺の家に来なよ!」
「ば…馬鹿なこと言うな!
 悟の家に、連れていくわけないだろう?」
「ちぇ。なんだよ。」


とんでもないことを言い出した。
とっさに止めて、俺は玲奈に
マチさんを預けた方がいいと思った。


「マチさんは、玲菜の家に連れて行こう。」
「はあ?冗談じゃないわよ。」


相変わらず、玲奈が反発する。
そんなにマチさんが気に食わないのか。


「大丈夫です。みなさんに迷惑を
 かけるわけには、いかないので…」
「ああ。玲菜、お前放っておくのかよ。」
「ああ。マチさん可愛そう。」


俺と悟は、玲奈を睨む。
すると、玲奈は、耐えきれずに言う。


「ああ、もう! わかったわ。
 マチさん、私の家に来ていいわよ。」
「あ…ありがとうございます!
 なんだか、ご迷惑をおかけして
 しまっているみたいで…
 ごめんなさい。」
「何言っているんだよ。
 困っている人がいたら
 助けるのは当たり前だろ?」


格好つけたような言葉を言ったが、
実際、マチさんを預かるのは
玲奈だから、仕方ない。


「あなたがタイムスリップした
 なんてこと、私は信じないけれど、
 行くあてがないみたいだから
 仕方なく連れて行ってあげるのよ。」
「ありがとうございます。」