「・・・え?

ちょっ、待って!!」




走り出すと言っても浴衣に下駄。



すぐに捕まってしまった。



あー。
こういう時、不便だなー。






「何の話?」


触れられた右手は熱くて。


それだけでドキドキしちゃ・・・






って、え?


まさか、知らないふりするの?








「・・・恵美ちゃんと付き合うって話だけど。」



「え?!




俺、振ったよ?」









へ?



「え、だって恵美ちゃんが・・・・・・ほら。」




私はさっきのメールを見せた。

これが何よりの証拠だよね?






「・・・あー。

嘘だよ。
加藤のやりそうなことだな。」



え?

恵美ちゃんってそういうことするの?




「意外に腹黒だよ?」






え、え、えぇ?



「ほんとに?」



「ほんとに。」




知らなかったー・・・。

そっか。
そういうことだったのか。



でも、多分。


それくらい好きなんだと思う。



でなきゃ、
ここまでできないよ。









「で、さっきまで捕まってて。

逆方向に連れてかれてた。」




な!




「でも、女の子でしょ?」



簡単に連れていかれちゃったの?




「いやいや、男に。

ボディガードっぽい人。



金持ちだからなー。」




はい?

ボディガード、ですか?

そ、そんなのテレビでしか見たことない。






「加藤に告白されたから、
他に好きなやついるからって言って、急いで走ってきた。」




え?


好きな・・・やつ?



「広、好きな人いるの?」


声が震える。


聞きたいけど、聞きたくない。







こわいよ。



否定して、お願いだから。



















「え?・・・うん。」











いるんだ。

そうなんだ。



今度は、
私が振られる番なんだね。



でも、少しだけ。





少しだけ、悪あがきしてもいいかな?










「・・・誰が好きなの?」





キョトンとした顔で、私を見る。


・・・可愛い。


こんな時でも、キュンとしちゃうのはおかしいのかな。











「え・・・。
今、目の前にいる。」





え?・・・目の前?




辺りを見渡すと誰もいない。




「・・・え?」




「お前だよ!」



赤くなって広が叫んだ。





え・・・?



「・・・私?」