「・・・っはぁ、よかった。
まだいた。」



少し前かがみになり、
膝に手をついた広は。





私を見て微笑んだ。








とくん・・・



また、心臓が早くなる。






なんで?


どうして来たの?


恵美ちゃんは?








そういいたいはずなのに、
言葉が出てこなかった。






ただ、来てくれたことが嬉しくて。






「あれ?


徹(とおる)?」







中野は『よっ』とだけ返事をして、
『なるほどね』と私に言った。



あ、バレたかも。











「・・・?

何が?」






話についていけてない広は、
首を傾げる。







「またな!佐々木。」



そんな広を無視して、
中野は走っていってしまった。







「って、俺は無視かよっ!」




と、叫んでる声も聞かずに。











ーーーーーーーーーーーー・・・






中野がいなくなると、
しばらくの沈黙。







き、気まずい。



















「ごめんな。


遅くなって。」









ドクン





その言葉で、
現実に引き戻される。




そうだよ。

振られるんじゃん、私。







「加藤が「もういいよ。」



広は私を見た。



ちょっと驚いた、不安げな顔。



まさか、メールで知ったなんて。

思ってもみないだろうな。








「わざわざ、来てくれてありがとう。




お幸せに。」




溢れそうになる涙をこらえて、
精一杯笑った。




大丈夫。

ここ、街灯少ないし。


わからないはず。








涙が零れる前に、走り出した。