俺は、泣いた。


泣いて泣いて泣いて…。


翠の手をギュッともう一度…握った。


このときには、もう……温もりなんてなかった。


冷たかった。翠の手は凄く冷たかった。



「…うっ…なぁ、翠ぃ?…目開けろよ…グスッ…笑ってくれ…よ……俺より、先に……逝くなよ…うっぁ…みど、り……うっ…翠…」


どんなに話しかけても、翠は何も言ってくれない。



「…翠ッ…ほら、空…クッ…綺麗だ、ぞ?…雨降って、たのに…晴れた、ぞ?……後で、散歩に行こうか?…拓海と…ッ…翠と…俺と…クッ…うっ…三人で!……なっ?…だから、…だから…」



どんなに笑いかけても、翠は笑ってくれない。



「…グスッ…裕也、くん……もう…翠は……」


七恵さんは、病室に入ると…俺の両肩を掴んで、涙を流しながら首を横に振った。