それ以来。渡辺はセンのことも、この屋敷の所有者のことも、詮索することを止めた。
自分たちとともに朱夏を護ってくれる者ならば、その素性などどうでもいいと思った。

その日から、センの淹れる珈琲を飲みに、朱夏が昼寝をしている時間などに、ふらりとカフェを訪ねるようになった。

他の者たちも、手の空いたときなどに訪ねているようだった。

渡辺は階下へと続く階段を降りながら、携帯電話を取り出して、センにメールを入れた。

昨日のうちに、午後から店は貸切にしてほしいと頼んであったが、朱夏の体調を見て改めて連絡を入れることになっていた。
朝早くから開いているあのカフェは、モーニングを目当てに建ち寄る客が多いらしい。
庭の手入れなどを主な仕事にしている金田が、ときおり、朝から訪ねることがあり、そう話し聞いていた。

だから、朝の電話は迷惑になるだろうと、渡辺は火急の用ではない限り全てメールにしていた。

午後に朱夏を連れ行くことを改めて伝えると、すぐに返信があった。


  (^^)b


言葉ではないその回答に、相変わらず、ふざけたヤツだと、渡辺は鼻を鳴らした。