‐何か、連絡したくなることが、あるかもしれないからさ


笑いながらのその言葉に、警戒しつつも互いの携帯電話の番号を交換した十日後のこと。

夜中に突然、センからの電話が入った。

すでに日付が変わろうかという時刻。
こんな時分に何のようだと訝しがりながら電話にでると、センはやや緊張した声で、怪しい男が屋敷のほうに向かっているとそう告げた。


『ここ二日、三日。このあたりをウロウロしていた男なんだけどな。今、屋敷のほうに向かっていったんだ。黒い車に乗っていたんだけどな、車のナンバープレートが外されていたっぽい。昼間も様子がおかしかったから、用心したほうがいいかもしれないぞ』


先代当主が渡辺の夢の中に現れてから、三日後の夜だった。
センからの知らせで、その夢で告げられた悪しき者の訪れとはこのことかと渡辺は悟り、急ぎ皆を起こしてその襲撃に備えた。

ほどなくして、屋敷内に押し入ろうとしている男の姿を見つけた渡辺たちは、その男を急襲して取り押さえ事なきを得た。