『わしと近しい縁者として生まれていれば、もう少し、違う生き様があっただろうに。あのような家に生まれたばかりに、可哀想なことをした』
命を狙う者が背後にいるにも関わらず、肘宛を枕に青嵐に背を向けて寝転がっていた老人のその言葉に胸打たれたからこそ、青嵐はそのまま屋敷を立ち去ったのだ。
繰り返されるシュカのその定めに憐憫を覚え、あのとき傍らにあった青年に護れとでも命じたのだろうかと、そんなことを考えながら、青嵐は煙草をもみ消した。
考えたところで。
仕方がない。
あいつの出方を。
しばらくは見ていよう。
我は。
あの子を護ることさえできれば。
それでいい。
暗闇の中、握り締めてきた手を思い出すように、青嵐は自分の手を見つめた。
小さな、あの手を思い出した。
あの小さき手では、己の命一つすら護ることは難しかろう。ならばこそ、今度こそは我が護ると、青嵐は決意も新たにそう誓いを立てた。
それにしても。
ワタナベか……。
これも何かの因縁なのかと、朱夏を護る男の名に、青嵐は眉を潜め、朝日が昇り始めた空に向かって、やや気鬱なため息を吐いた。
命を狙う者が背後にいるにも関わらず、肘宛を枕に青嵐に背を向けて寝転がっていた老人のその言葉に胸打たれたからこそ、青嵐はそのまま屋敷を立ち去ったのだ。
繰り返されるシュカのその定めに憐憫を覚え、あのとき傍らにあった青年に護れとでも命じたのだろうかと、そんなことを考えながら、青嵐は煙草をもみ消した。
考えたところで。
仕方がない。
あいつの出方を。
しばらくは見ていよう。
我は。
あの子を護ることさえできれば。
それでいい。
暗闇の中、握り締めてきた手を思い出すように、青嵐は自分の手を見つめた。
小さな、あの手を思い出した。
あの小さき手では、己の命一つすら護ることは難しかろう。ならばこそ、今度こそは我が護ると、青嵐は決意も新たにそう誓いを立てた。
それにしても。
ワタナベか……。
これも何かの因縁なのかと、朱夏を護る男の名に、青嵐は眉を潜め、朝日が昇り始めた空に向かって、やや気鬱なため息を吐いた。


