捕らえるつもりがあったのならば、あの時にそれはできたはず。
あの老人とあの青年。
2人を相手にしては、おそらく、自分の力をもってしても勝つことは敵わなかった。
それは容易に想像できる。
できるだけに、この邂逅が自分を捕らえるためのものとは、青嵐には思えなかった。

それにと、青嵐は考えた。


シュカを語るときの。
あの者の目は。
たいそう、優しかった。


幼子を見守る親のような深い愛情を湛えた、優しい目をしていたからこそ、センから語られたシュカの話を信じようと青嵐は思った。


見護る、か。


我ではなく、これから生まれくるシュカを見護れと、そう命じられているのかもしれない。
ふと、そんなことを青嵐は閃いた。
あの老人が、どうしてそんなことを考えたのかは判らない。
けれど、かつて相見えたあのときですら、あの老人は朱花のその生を哀れと嘆いてくれた。