街中から外れたこの店は、夜早くには閉めてしまう分、朝は早くから開けている。

隣町との境目にあるこの場所は、宵の口を過ぎたあたりから、人や車の通りも少なくなり、夜明けから夕刻にかけてのほうが人や車の通りが多くなる。

少し休ませてもらうと言う青嵐に、もうじき店を開けるから俺は寝ないと言い捨て、センは一人、まだ残っている饅頭を食いながら店で寛いでいた。

思い浮かべたあの年寄りの面影に、センは話しかけ続けた。


爺さん。
あのときの鬼が来たぞ。
聞いたとおりに。
やってきたよ。


閉じた瞼に浮かんだ、人の悪い笑みを浮かべるあの年寄りの顔に、センはそう報告した。


見守ればいいんだな?
それだけで。
いいんだな?


かつて、その最期にセンに残した命を思い出し、センは記憶の中のかの人にそう確認する。

それに一体どんな意味があるのか、センには判らない。
問いただす間もなく、あの年寄りは息を引き取った。
セン以外、看取る者など一人もいない屋敷で、息を引き取った。
行く末を見守れと、それだけを言い残し、あの年寄りは逝った。


まあ。
見守れっていうなら。
見守るだけさ。


誰かと暮らすのは久しぶりだなと、センは大きく伸びをしながら深呼吸をして、新しい朝の訪れを見つめていた。