「まだ、朱夏ちゃんは小さくて、自分の力を制御しきれなくてね。つい、見なくてもいい人の先まで見てしまうんだ。渡辺はそれを判っているからな」
「そうか」
「朱夏ちゃんのことを知って、先を視てもらおうと、約束もなく押しかけてきた者は、あの屋敷の者たちは力ずくでも追い払う。約束がある者でも、五分と決められている懇談なら、時間が過ぎれば問答無用で追い払う。あの屋敷にいる者は皆、朱夏ちゃんが好きなんだ。だから、必至に守っている」

ふわりと、空を見つめていたセンの目が青嵐を見た。
穏やかに笑っている目だった。

「あの屋敷の者は、傷つけるな。皆、あの子を守っている」
「判った。肝に命じておこう」

それを伝えたかったのかと、青嵐はやっと理解して、大きく頷いた。
屋敷にいる者たちがあの子を守る者ならば、ならば、我がその者たちを守ってやろうと、そんな決意を胸に刻んだ。

「あんた。これからどうする?」

行く宛てはあるのかよ?
青嵐の今後を尋ねるセンの声に、青嵐はどうしたものかと考えていると答えた。
この町で暮らすならば、誰かに暗示でもかけて、どこかの家に潜り込むしかないが、その相手は慎重に見極めないと、すぐにボロが出る。
いきなり、見たことのない男が親戚だなどと言って住みつけば、中には不審がる者もいるだろう。
センは言葉を信じるならば、既に怪しむ者たちがいるらしい。それを知った以上、今までのように、不用意に外をうろつき歩くようなことはしないほうがいいと、青嵐も考えた。