「あの屋敷には4人の使用人がいる」

唐突に、そんなことを喋り始めたセンを、青嵐は訝しげに眺めた。
それがなんだというのだと、眉を潜めた。

朱夏を苦しめる親に雇われた者たちだ。ロクな者ではないだろうと、青嵐は考えた。

そう思う青嵐に、センは意外な言葉を告げた。

「みんな、朱夏ちゃんが好きでね。あの子を守るためたら、あの子の親にだって意見するような使用人たちばかりなんだ」

楽しそうに告げるセンに、青嵐は一瞬虚を突かれたような顔をして、それから、少し安心したように笑った。

「特に、日中は側を離れない渡辺って男は、朱夏ちゃんの番犬みたいに言われている」
「渡辺?」

右の眉尻をピクリと跳ね上げて、青嵐はその名を尋ね返したが、センはその男の氏素性については語ろうとはしなかった。

「渡辺も、朱夏ちゃんが自分の命を削っているとは思っていないようだけど、力を使えば具合が悪くなるのは知っているからな。だから、必要以上に人とは会わせないようにしている。一人、こんな辺鄙な場所に追いやられたことをこれ幸いに、渡辺は朱夏ちゃんをあまり人と接触させないようにしている」

あの子があの屋敷からあまり出ないのは、そのせいもある。
そう言うセンのその声は、飄々としつつも明るく楽しげなものだった。