一願

－オ、ノ、レ、ノ、イ、ノ、チ

すぐに、その言葉を理解することができず、青嵐は息を飲み喉を鳴らした。
反響する鐘の音のように、その言葉が青嵐の耳の奥で、繰り返し響いた。

「おのれのいのち」

ようやく、それを己の言葉として発し、繰り返し、青嵐は唇を戦慄かせた。

「自らの命を、力の対価にしていたというのかっ」
「シュカ、シュテンは、己の命を対価にして、人の先を視るんだそうだ」

青嵐を見ることなく、窓の向こうの白み始めた空を見つめて、センは訥々と語り口調で、その重い事実を、青嵐に突きつけた。

「人の先を視るたびに、シュカは、自分のその命を縮めていく。あんたが育てたあの朱花は、あまり丈夫な性質ではなかったろう。力を使った後は辛そうじゃなかったか？　あの屋敷の朱夏も、体が弱い。長くはないと医者は言ったらしい。シュカ、シュテンとして生まれた者は皆、そうらしい。長くは生きられない定めなんだとさ」


あの屋敷にいた少女を、青嵐は思い返した。

血の気のない肌。
冷たい手。
細く小さな体。

眠るその姿を眺めながら、長くはないと、確かに、青嵐もそう感じた。