一願

かつて。
朱花とともに、朱花を慕い集うた者たちと暮らしていた、あのときを、青嵐を思い返した。

それは一人で生きてきた青嵐には、余りにも楽しいときだった。
いつかは終わると、そう判っていても、未来永劫続いてくれと、そう願わずにはいられなかったほど、楽しく賑やかな時だった。


笑いを。
涙を。
喜びを。
悲しみを。


青嵐に教えてくれたときだった。

彼らを失い、自分ひとりだけが残されたときのあの孤独と喪失は、鬼と呼ばれる我の胸ですら、深く抉り傷つけた。
だから、もう人と共には生きぬと山に篭った。
センと名乗ったこの者は、何度もあの孤独と喪失を味わってきたのかと、その胸中を青嵐は思った。
感傷に耽るセンを見ながら、青嵐は恐る恐るシュカのことを尋ねた。

「シュカの対価は、なんだ？」

シュカがその力を使うとき、払う対価はなんなのだと、青嵐はその答えをセンに迫った。
一呼吸の間を空けて、センは口を開いた。

「己の命さ」