「なあ。あんた。人にない力を持った人が、その力を使うときには対価が必要だって、知ってるか?」
「対価?」

しばしの沈黙の後。

センは静かな声で、そんなことを青嵐に尋ねてきた。
夜明け前の澄んだ空気に溶けてしまいそうな、静かな静かな声だった。

その意味が判らず、なんのことだというように目を細めてセンを見つめる青嵐に、センは薄笑いを浮かべる。

「力を使う対価さ。人によって、払うものは違うらしい」

もう、何個目か判らぬ饅頭をまたぼんと口に放り込んで。
センは青嵐に語り聞かせるといいよりは、まるで独り言のように、淡々と言葉を繋ぎ続けていく。

「爺さんにも力があった。人にはない力がな」

知っているだろうと問う声に、青嵐はああと頷いた。

「その力には、払うべき対価があった。望んで、持った力でもないのに、払わなければならにい、無慈悲な対価だった」
「何を払ったのだ、あの老人は」
「爺さんがその力が使うとな。爺さんの身近にいるヤツが、死ぬ。それが爺さんに課せられた対価だ」

親、兄弟、妻に子、友に家臣。爺さんは全て亡くした。
訥々と語るセンの言葉を聞きながら、青嵐はあの老人の屋敷に忍び込んだあの日のことを思い出した。