枝も揺らすこともなく、ぽんと飛び上がった男は、小さなそのテラスに足を揃えてすくりと降り立った。

静かに、窓を開く。

部屋の中は物音一つない、静かな空間だった。
部屋に差し込む月明かりもない夜は、部屋の中さえも闇色に染めていた。

そろりと、室内に足を踏み入れて、男はある一点をぴたりと見据える。

気配を殺して、そこに歩み寄っていく。

そこに、男が探し続けてきた愛しき者と同じ魂を持つ者の気配があった。


逸る心を静め、男はゆっくりとそこに近づいていく。

常人であれば何も見えない闇夜であっても、夜目の利く男には昼日中を歩いているのと変わらない。
まっすぐに、その気配のある場所を目指して歩いていった。



天蓋付きの大きなベットで、すやすやと、安らかな寝息を立てて眠る者がいた。

幼い少女が一人。
そこで、静かに眠っていた。

幼いながらも、目鼻立ちの整った美しい顔をしている。
前髪を眉の辺りで真っ直ぐに揃えて切り、横髪も後ろ髪も肩の辺りで綺麗に切り揃えられていた。
童姿の愛くるしい日本人形のような、そんな容姿をしている可憐な少女だった。