小さく柔らかな手が、青嵐の頬に触れた。

その瞬間、青嵐はその赤子を抱き上げてまま、跳んでいた。

どうしてそんなとこをしたのか、今でもあの時のあの気持ちが判らない。
ただ、ただ、その小さき赤子を守りたい。
青嵐はそう思った。

長き時を一人で過ごしてきた青嵐は、その長き生の中で、そんな気持ちを何かに抱いたことなどなかった。


-この子は我が貰う。


未だ赤子を巡り争う者たちにそう告げて、青嵐は獣も物の怪も追いやった。
その山では主となりつつあった青嵐に、力で敵う者はなく、皆、悔しがりながらも立ち去った。

人の子も、赤子のうちは乳の飲み育つことは知っていた。
だから、里山に降りては乳を溢れさせている女を攫い、その赤子に乳を飲ませて育ててみた。

その赤子に朱花と名づけたのは、包まれていた着物に花の模様があり、そして、人の子としては少し変わったことに、爪が朱い赤子だったからだ。
そこから、青嵐が朱花と名づけたのだ。
親がつけた名ではない。
青嵐が気まぐれにつけてやった名だ。

だから、センと名乗る青年の言葉が、青嵐には理解できなかった。