一願

「安部の名を持つあの家は、あの老人と繋がりのある家なのか？」

名の持つ響きは同じようだが。
そう疑問をぶつける青嵐に、センは唸るように考えながら答えた。

「そうだなあ。ずっと遡っていきゃ、どこかで繋がるんだろうけど。今の戸籍の上では、なんの繋がりもない家だな。爺さんの時代でも、もう遠縁だったからな。シュカが生まれる家は」
「シュカが生まれる家？」

どういうことだと言うように眉を潜める青嵐を見て、だからさ、長い話になるから、まずは座れよとセンはため息を吐いた。

「別に。あんたを取って喰おうなんて思ってねえからさ。なんか、そこで立ってられる落ちつかねえし」
「シュカが生まれる家とはなんだ？」

イスを引きながら青嵐は話の続きをセンに促した。
空が少しずつ白み始めている。
夜明けを迎える前に、少しでも多くの話を聞きだしたかった。

まあ、これは爺さんの受け売りなんだけどな。
そう前置きをして、センは青嵐の疑問に答えていく。

「あんたの知ってる朱花ちゃん、不思議な力を持っていただろ？」

疑問形でありながら確信を持っているその声に、青嵐は隠しても無駄だと悟り大きく頷いた。