最近はめっきり少なくなったが、自分のような異形の者を狩ることを生業にしている者たちが、今のこの世にも確かにいた。

青年が見た目通りの年ならば、まだそれほどの腕ではないだろうが、青年が纏う雰囲気は、駆け出しの鬼狩りなどというものではなかった。

鬼狩りならば、やっかいだなとそんなことを思いつつ、やっと巡り合えたあの魂のためにも、今ここで鬼狩りの手にかかり死ぬわけにはいかないと、男は青年の挙動を慎重に観察した。

男のその警戒に、青年は笑う。

「だからさ。やりあう気はないって」

その気があったら、声かけたりしないって。
苦笑混じりの声で男を窘めるような口振りで話しかけてくる青年に、男は戸惑った。
この青年が何者で、声を掛けてきた理由はなんなのか、どれだけ考えても男には全く判らなかった。

「こんな時間に、レディーの部屋に忍び込むなんて、お行儀が悪い人だなあ」

男が今までどこにいたのかを知っている青年のその口ぶりに、男はまたその眼差しをきつくした。
あの少女を守るためのに、あの屋敷の家人に雇われている者かも知れないと、男は青年の素性を考えた。

「朱夏ちゃん、驚いちゃったんじゃないの?」

体が弱い子なんだからさ、あんまり、驚かせるようなことしちゃダメだよと、出来の悪い息子でも叱るような口ぶりでそういう青年に、男は警戒することも忘れ、驚いた。
青年の口から、さらりと発せらたその名に、男はその目を大きく見開き、驚いた。
我が耳を疑うほど、男は驚いた。