「オニさーん、みっけ」

まだ、闇が広がる時間にはそぐわない、背後からのあまりにも能天気なその声に、男は肩を大きく揺らして振り返った。

やっと叶ったその再会に、一人、深い感傷に浸っていたとはいえ、背後のその気配に全く気づけなかったことに、男は驚いた。

二歩、三歩、跳ぶようにして後ろに跳ね退いた男は、身構え、声のした暗闇を険しい顔つきで見据えた。

こんなふうに、その気配を殺して忍び寄り、自分の背後に立った者だ。声の主がただの人ではないことは、明らかだった。

暗闇に目を凝らし、男はその姿を捉えようとした。

「ちょっと、待った。こっちはさ、あんたとやりあう気はないからさ。いきなり、飛び掛ってきたりするなよな」

俺、そんなに強くないから、勝てないし。痛いの嫌いだし。
男の身構えている様子が見えるのだろう。
声の主は、くつくつと楽しそうに笑いながら、まるで闇の中から生まれ出たように、するりとその姿を表した。

人で言うなら、二十歳そこそこというくらいの、若い青年の姿をしていた。
白いシャツにジーンズという装いは、どこにでもいる普通の青年そのものだった。

だが、青年は自分を"鬼"と呼んだ。ならば、敵である可能性が高いと、男はさらに警戒を強めた。


鬼狩りか?


背筋にじんわりと汗を浮かべつつ、作った臨戦態勢はそのままに、男はゆっくりと近づいてくる青年の顔を、きつい眼差しで凝視した。