父母に疎まれ、遠ざけられたこの地で、まるで幽閉されているかのように、朱夏は静かに暮らしていた。
その暮らしは、そろそろ五年になる。
この地に来た頃は、傍にない父母の温もりを求めて恋しがり、ただ泣き明かしていたが、いつしか、そんなふうに泣くことも、朱夏はしなくなった。
幼いながらに、諦めることを知ってしまった。
月に一度ほど、娘の様子を見に朱夏の両親が訪ねてくることもあったが、彼らが屋敷に滞在する時間は短い。
二年前、彼らが待ち望んでいた息子が生まれてからは、さらにその時間は短くなった。
朱夏にとっては弟になるその子にすら、朱夏は会わせてもらったことがない。
父というより、母が。
姉と弟を会わせることを拒んでいるとそう聞いた。
朱夏が五つの年になった頃。
朱夏を前にして、わが娘を化物と詰り叫んだ女だった。
あの日から。
渡辺はあの女が赦せない。
何を言われたのかは、幼い朱夏にには理解できなかったかもしれない。
けれど、朱夏は傷ついていた。
大きな瞳から溢れていた、あの大粒の涙が、今でも渡辺は忘れられない。
この優しき幼子を。
化物と罵るなら。
その子を産み落としたお前は。
なんだと言うんだ。
今でも、あのときのことを思い出すと、その胸倉を掴み上げ力の限り引き倒してやりたくなる。
その暮らしは、そろそろ五年になる。
この地に来た頃は、傍にない父母の温もりを求めて恋しがり、ただ泣き明かしていたが、いつしか、そんなふうに泣くことも、朱夏はしなくなった。
幼いながらに、諦めることを知ってしまった。
月に一度ほど、娘の様子を見に朱夏の両親が訪ねてくることもあったが、彼らが屋敷に滞在する時間は短い。
二年前、彼らが待ち望んでいた息子が生まれてからは、さらにその時間は短くなった。
朱夏にとっては弟になるその子にすら、朱夏は会わせてもらったことがない。
父というより、母が。
姉と弟を会わせることを拒んでいるとそう聞いた。
朱夏が五つの年になった頃。
朱夏を前にして、わが娘を化物と詰り叫んだ女だった。
あの日から。
渡辺はあの女が赦せない。
何を言われたのかは、幼い朱夏にには理解できなかったかもしれない。
けれど、朱夏は傷ついていた。
大きな瞳から溢れていた、あの大粒の涙が、今でも渡辺は忘れられない。
この優しき幼子を。
化物と罵るなら。
その子を産み落としたお前は。
なんだと言うんだ。
今でも、あのときのことを思い出すと、その胸倉を掴み上げ力の限り引き倒してやりたくなる。


