真っ黒の男が消えた窓を、少女はしばし、ぼんやりと眺めた。
それでなくても、普段から夢と現を行き来しているように、ぼんやりしている頭だった。
真っ黒の男が、夢か現か、少女は悩んでしまう。

少女は首を傾げて考えた。


ゆめ?
ちがうよね。
そこにいたよね?


サイドテーブルに手を伸ばし、小さなルームライトの灯りをともした。
ベットを降りて、真っ黒の男が消えた窓に立った。

空いている窓から外を見る。

月のない夜は真っ暗で、目を凝らしても何も見えない。
ましてや、小さな少女の目線から見える範囲など限られている。
木々が生い茂る広い庭に、人影など見つけられようもなかった。

それなのに、真っ黒の男の姿はこの暗闇の中でもしっかり見えた。
何も見えない真っ暗な部屋の中でも、その姿を少女の目はしっかりと捉えていた。

へんだなあと、少女はまた首を傾げた。

なんとも言えない奇妙の思いを抱えたまま、少女は静かに窓を閉めた。


なんで。
まどをあけておいたんだっけ?


平素であれば、決して、眠り落ちるの時に開け放しておくことなどないその窓を開けたのは、自分だったような気がする。
けれど、その理由を、少女はもう思い出せなかった。

考えても仕方ないと諦めて、少女はベットに潜り込んだ。