「え?どんな夢ですか?」

「全く知らない若い男の夢」

 口に押し込むように忙しく動かしていた上山の箸が、動きをピタリと止め横目で私を見た。

「全く知らない若い男?何ですかそれ?」  

私はその質問に答えようがなく、わかり易く首を傾げた。

「どんな感じの男だったんですか?」

上山はまた箸を動かし始めながら私に訊く。

「そうだなあ。名前は小林正也、歳は二十歳。大学生で……」

「え?ちょっと待ってください。夢なんですよねえ?」  

私が話している途中に上山は割り込んで中断させた。私は「まあ」と言って返した。

「どうしてそんなに人物設定って言うか、なんて言うか……僕がいつも見ている夢ってもっと記憶が曖昧で、はちゃめちゃなんですよね。だから、言い方が難しいですけど」


上山は目を天上に向けて良い言葉を詮索しているようだった。