「はい。
 承知しております。
 滝本大輔様には想い人がおられて
 その人としか一緒にならないと
 おっしゃっていて今、話し合いを
 しておられますから・・・」



「だから父は会議に?」



「はい。
 優香様を連れてくるように
 ある方に言われたので・・・。
 少し手荒な真似をしてしまいました。
 すみません。お許しを」


「それはいいのですが
 ある方とはいったい?」


「もうすぐ来られるかと・・・」





そう言った瞬間
私と同い年くらいの
男性が部屋に入ってきた。


「榊。余計なことは
 言わないでいい。
 すみません。優香さん。
 手荒な真似をしてしまいました」


「あなたは?」


「僕は滝本大輔です。
 あなたの婚約者の」


「あなたが大輔さん・・・。
 こちらは?」


「あぁ・・・。
 執事の榊翔真(さかきしょうま)です」

「申し遅れました。
 執事の榊です」


「で、私に何の御用ですか?」


「本山航生・・・。
 知っておられますね?」


「・・・えぇ。なぜ彼のことを?」


「僕は、滝本勘三郎の息子だと
 いうことを隠しながら大学に
 通っていて彼は僕と同じ
 大学でなおかつ僕の友達です」


「それで?」


「優香さん。
 あなたは航生のことを
 どう思っているのですか?」


「航生なんてとっくの昔に忘れました。
 彼はもう私には関係ありません。
 もし私が今でも彼を思っていると
 お思いなら勘違いしないでください。
 それに、何も関係ない彼に
 手を出すのもやめてください」


「ウソだ。
 あなたはまだ彼のことを愛してる。
 そして航生は今でもあなたを
 待っているんだ・・・。」


「航生が私を?
 そんなわけない。彼のことだから
 もうすでに新しい彼女がいるはずよ?
 私なんかのこといつまでも
 想ってるわけないじゃない」


「えぇ。確かに彼には彼女はいます。
 でも彼はその人の事を愛してはいない。
 うわべだけの彼女なんです」


「うわべだけ?」


「はい。彼が愛せるのは
 優香さん、あなただけです」