ごめんなと言おうとした瞬間
咲が俺を抱きしめた。


「航生、辛かったね・・・。
 気づいてあげられなくて
 ごめんね?ホントにごめんね?」

そういって咲は涙を流していた。

「咲?
 なんだ咲が泣くんだよ」

「だって・・・  
 なんか悲しくなってきたんだもん」

咲・・・ありがとう

「俺のために泣いてくれて
 ありがとな、咲」

「自分のためだよ。
 ねぇ、航生・・・。
 私じゃ優香さんの
 代わりになれない?」

「えっ?」

「航生が忘れられないなら
 それでもいいの。
 それでもいいから付き合って
 って言ったら怒る?」

「咲は本当にそれでいいのか?
 恋人らしいことは何もできない」

「いいの。
 航生の隣にいれればそれで」

「・・・やっぱダメだ。
 きっと咲を傷つけることになる」

「それでもいい。
 覚悟はできてるから。
 こうやってたまに抱きしめて
 くれるだけでいいの。
 それ以上は何も望まないから」

「ほんとにいいのか?」

「いいって言ってるでしょ?」

「咲・・・ごめんな」

「なんで謝んのよ?笑って?
 航生には笑顔が一番似合うから!」

「おう!ありがと!」

「これからよろしくね」

俺はそう言う咲にほほ笑んだ。