未熟な恋人




自分を責めるような言葉を紡ぐ私をかばうように、暁は必要以上に大きな声で私を見つめた。

わかってる。

暁の海外留学に対する寂しさが私のストレスになっていて、妊婦にはマイナス要因になっていたことに、当時の私は気付いていた。

「ストレスがなくて、心も体もちゃんと成熟していたら、赤ちゃんの命は救えたかもしれないね」

暁の声に負ける事なく、一語一語しっかりと、反論を許さないように。
この言葉は、私がずっと悩んで考えていた事への結論で、たとえ暁がどう言って私の気持ちを軽くしようとしても、変える事はできないから。

一気に言い切った。

そして、私の頬には熱いものが流れて止まらない。

あれ以来、感情の起伏を失くして、喜怒哀楽を顔に出さず、他人との一定の距離の中で生きてきた私。

寂しさも孤独も、感じないわけではないけれど、赤ちゃんを失って以来、私が幸せになる事は許されない気がして、無意識にそう生きてきた。

涙を流すほどの感情の揺れすらなかったせいか、今流れる涙を止めるにはどうしていいのかわからなくなって。

不自然な仕草で涙を手の甲で拭うけれど、溢れるばかりの熱い悲しみと後悔。

ここ何年間か、体に蓄えられた悲しみが一気に流れ落ちるようで、どうしようもない。

「……伊織、ごめんな。一人置き去りにしたまま留学して。
二人で悲しみを分け合えば、こんなに涙を流す必要もなかったのかもしれないのに。
俺が……伊織を見捨てたから、一人にして、ごめん」

私を抱きしめて、何度もごめんと呟く暁の胸に顔を押し付けながらも、私の瞳からは涙が零れ落ちて。

次第に湿っていく暁のシャツ。きっと、すぐにびしょびしょになってしまう。

背中を何度も優しく撫でてくれる暁の手の温かさが、更に呼び水のように、私の体中を震わせた。