* * *
「伊織?おい、伊織……?」
はっとした瞬間に目に飛び込んだのは、必死の形相で私の肩を揺らす暁の顔。
過去への物思いにふけっていた私は、意識全てが過去へと飛んでいたらしい。
「あ、大丈夫だよ。色々と思い出してただけで、平気」
本当は大丈夫じゃないくらいに心臓がばくばく鳴り響いているけれど、それは初めてのことじゃない。
あの日以来、何度も経験している悲しい響きだ。
それでも、そんな悲しみをどこかに追いやるように小さく首を振って。
「私のお腹の中って、こんなにかわいいピンク色だったのかな」
手元のCDのジャケットを見ながら、そして、白いハートを指で優しく撫でた。
「ほんの少ししか私のお腹にいられなかったよね、ごめんね」
「伊織……」
「せっかく、私と暁のもとに来てくれたのに、会えなかったね……会いたかったのに、ごめんね」
「伊織のせいじゃないよ」
私の肩を抱き寄せて、その胸に包んでくれる暁の体からは、懐かしい体温が届いて切なくなる。
高校の頃と変わらないその体温に、記憶も涙も溢れ出した。

