そんな状況の中で、私を日本に残したまま留学なんてできないと暁は言い出したけれど、私を含めて、周囲のみんなで説得した。
『立派なヴァイオリン奏者になって、私と赤ちゃんにラクさせてよ』
私のそんな言葉をどこまで信用したのかはわからないけれど、渋々受け入れてくれた暁は、卒業式の翌日に日本を発つことになっていた。
そして。
日本を発つ前に入籍を済ませようと準備を進めていたある日。
産婦人科での定期健診で赤ちゃんの心拍に感激した私は、心軽やかに家路を急いでいた。
エコーで見た赤ちゃんはまだまだ小さくてぼやけていたけれど本当に愛しく思えて、早く会いたくてたまらなかった。
エコーの写真を暁に見せるのが楽しみで、思わず笑顔も浮かんだ。
そんな幸せな私を襲った一台の車。
赤ちゃんをかばうようにお腹に手を当てて守ろうとしたけれど、結局守れなかった。
ほんの少し前には力強い心拍を響かせていた赤ちゃんは、私のお腹からいなくなってしまった。

