高校三年生の夏には、暁は海外への留学が決まっていた。
小さな頃から習っていたヴァイオリンに才能を見出され、何年もの間レッスンに
明け暮れた日々の結果が報われて、コンクールで優勝した。
その結果、留学できるという未来を手に入れて、暁は喜んでいた。
一般企業の会社員である暁のお父さんのお給料では、暁に留学をさせてあげられる余裕なんてなく、それ以前も、楽器代やレッスン代を捻出するためにお母さんが働きに出ていた。
そんな環境でレッスンを続けた結果、コンクールでの優勝を勝ち取ったんだから、暁にとっては言葉にできない想いがあったに違いない。
暁がヴァイオリンに魅せられて必死でレッスンを受ける姿を、私は隣で見ていたから。
留学が決まった時には
『おめでとう、良かったね』
寂しい気持ちに蓋をして、どうにか笑顔を作った。
暁も私を日本に残して海外に行くことに寂しさとためらいはあったようだけれど、それ以上に、ご両親が苦労して続けさせてくれたヴァイオリンで将来を形作る事ができるかもしれない喜びの方が大きかったようで。
『必ず一人前のヴァイオリン奏者になって迎えにくるから』
優しい体温で、私を抱きしめてくれた。

