それこそ奇跡に近い。
赤ちゃんが天国にいってしまって、暁も悲しかったに違いないのに私を気遣ってくれた暁。
そんな彼すら拒否して自分の悲しみに閉じこもっていた私に、暁が見切りをつけても文句は言えないと思っていた。
何年も離れている間に、きっと私以外の女性が暁の近くに現れたはずなのに。
今でも私を選んでくれるなんて、本当に奇跡だ。
どんな言葉を落とされても、それを単純に信じられない私を見ていた暁は、すっと表情を硬くしたと思うと小さく呟いた。
「伊織は?どうなんだ?今でも……」
暁の心細そうな声に、私も思わず大きな声で告げた。
「愛してるよ。暁の事、ずっと好きだった。暁が大学で海外に行ってしまった後、どうして一緒に行かなかったのかって、後悔ばっかりしてた」
暁と兄貴が交わした
『奇跡の再会を信じて連絡を一切断つ』
っていう約束も私にはショックで、兄貴を責めたことも一度や二度じゃなかった。
高校を卒業した後、私は一浪して大学に通い始めて。
一人暮らしを始めたのは実家からは離れた街。
暁には予想もつくはずのない駅を日々乗り降りする生活が始まった。
暁のご両親も暁の居場所を教えてくれなかったから、もう会えない。
奇跡の再会なんて、絶対無理って何度も思ったけど
思い返すようにたどたどしい声で話していくうちに、やっぱり涙があふれて目の奥が熱くなる。
暁が私の知らないところに行ってしまった現実が信じられなくて、半狂乱になっていた私の感情が蘇ってきて苦しい。
そんな私の涙を指先で拭ってくれて、暁は私に負けないくらいに苦しげな声をあげた。

