「私……私、ずっと後悔ばかりしてた。
赤ちゃんがいなくなって、悲しくて仕方なくて、生きていくのも嫌になったのは、決して暁が悪いわけじゃないのに、自分だけがつらいみたいに暁に冷たくして」
「伊織……」
「今までで一番悲しかった。
赤ちゃんがいなくなったお腹を撫でた時、体が割かれるように痛くて、吐きたくても吐けないほどに気持ちがおかしくなって。
それでも暁は何度も私に会いに来てくれたのに、なのに、会いたくないって全部断ってたよね」
ずっと心の深い所に留めていた辛くて醜い感情が口から溢れ出して、どうしようもない。
自分のコントロールが効かない状態を始めて経験する。
気持ちがおかしくなったわけじゃない、ちゃんと正気だけれど、それでもどうしようもなく感情が溢れる。
私の思いは過去へとさかのぼる。
……後悔なら何度もした。
それこそ、一日に何度も。
愛しい赤ちゃんが私のお腹から天国に行った日からずっと。
どうしてあの日あの道を歩いていたんだろうか、とか。
どうして暁と一緒にいなかったんだろうか、とか。
あの日、暁は部活の送別会で、一人で産婦人科の検診に行った帰りだった。
まだまだ小さくて、それでも確かに私のお腹で育っている赤ちゃんをエコーで見せてもらって、お母さんになれる実感に震えた。
たとえ家族が応援してくれていたとしても、不安がいっぱいで、自分たちは悪い事をしているんじゃないのかっていう罪悪感も拭えない日々だったけれど、赤ちゃんの写真を見て、やっぱり産みたいと改めて思って。
本当に嬉しかったのに。

