未熟な恋人



ちゃんと、しっかりと聞かなくてはいけないと思いながら、それでも不安な気持ちが声音に現れていたと思う。

離れていた長い間、絶えず私につきまとっていた不安は途切れることなく私を傷つけていた。

気持ちを強く持って暁と再会できる日を待とうと思っても、不安が私を弱くして。

どうしようもなかった。

そして今、私の唇から零れ落ちた。

思わず、という感じで出た、私が問いかけたその言葉に、暁ははっと顔を上げた。

そして、途端に悲しげに瞳が暗くなった。

そんな気持ちを隠すように一つ息を吐いて。

「当たり前だろ。伊織を忘れた事なんて、一日もない。
思い出す度に体の一部が壊れていくような苦しみを感じるのに、それでも愛する事はやめられなかった。
奇跡にすがる自分を変えられなかった。
たとえ、会えなくても好きだと言う気持ちは変わらなかったし、これからも変わらない」

まるで、これまで何度もそう繰り返したかのような言葉は、私が欲しいと願っていた以上の嬉しい言葉だ。

もしも暁と再会できたなら、私を愛していると、そう言って欲しいと願い続けてきた。

まだ若かったあの頃は、悲しみの時間の中で私と暁が一緒にいるための方法は限られていて、傷ついた私の心と体は、暁との未来を手放してしまった。

直接暁を解放したのは私の兄貴だった。

そしてその事を何度も責めたけれど、当時の私達には他に取るべき道もなく、仕方のなかったこと。

周囲の人達が、私達の将来をも考えての悲しい決断だったと、今ならわかる。