そう、高校生だったあの時に私のお腹に宿った命。
私と暁の赤ちゃんは、誰にも祝福される事なく天国へと旅立ってしまった。
高校三年生の冬、卒業間近のあの日、病院で告げられたのは私が妊娠しているという事。
もちろん暁と私の赤ちゃん。
まだ高校生の私達は、妊娠という事実に不安になり、震えながらも、赤ちゃんを幸せに育てようと決意して、心配する家族みんなを説得、そして協力を仰いだ。
まだ高校生だった私の妊娠に、家族みんなが驚いたのは言うまでもない。
私の両親も、暁の両親も、泣いて怒って、私を抱きしめて、暁は殴られて。
『ちゃんと育てられるわけないでしょ』
と涙ながらに言われた。
両親にしても、私と暁の付き合いに賛成していた気持ちが強かった反動からか、裏切られたという思いも募って、頭ごなしに出産を反対された。
『子供が子供を産むなんて……』
周囲の人たち全てを驚かせ、悩ませて。
出産を迎える事は無理なのかと、諦めそうになった。
それでも、愛する人の子供を産みたいという決意は固くて、何度も説得した。
そして、両親にしても、生まれてくるのは可愛い孫だということもあって。
大学進学が決まっていた私たちは、その進路を変えないという事を条件に、赤ちゃんを産んでもいいと、そう言ってもらった。
もちろん、家族総出の協力も申し出てくれて、それに甘えさせてもらうことにした。
どんなに反対されても産むつもりでいたけれど、家族からの応援までもらえた事で、ほっとして、本当に幸せだった。
まだ何のふくらみもないお腹を撫でながら、何度も『早く会いたいね』と囁いていた私は、将来への不安よりも、幸せの方が大きかったのに。
赤ちゃんの泣き声を聞くのを楽しみに過ごしていた矢先、脇見運転をしていた車が私に突進してきて、ぶつかった。
そして、赤ちゃんの心臓は止まってしまった。

