「あ……ごめんなさい。泣くなんて、そんなつもり、ないのに。
そんな資格なんて、ないのに」
自分でも驚くほどの震える声で、暁に謝りながら、両手で顔を覆った。
それでもあふれ出る涙が止まる事はなくて、流れるように、指の間から零れ落ちていく。
謝罪の涙だ。
ちゃんと産んであげる事ができなかった赤ちゃんへの謝罪。
そして、私のつらい気持ちばかりを優先させて、分け合う悲しみというものに目を向ける事ができなかった、そんな私に傷ついた、暁への謝罪。
今更の涙だけど、止める事ができない。
「伊織、伊織……」
震える低い声が聞こえたかと思うと、暁の体が私の全てを包み込んだ。
強く、一気に引き寄せられて抱きしめられた私の体は、暁の鼓動に一番近い胸元で彼の熱を与えられて動けなくなった。
羽交い絞めされたかのように、じっとそのままの私。
とくとくと聞こえる暁の鼓動が、驚くほど速く脈打っているのがわかる。
首筋に落とされた暁の唇からは、私の名前を何度も呼ぶ声と熱すぎるほどの吐息が感じられた。
切羽詰まったように荒くなる暁の吐息に、私の気持ちも涙もさらに揺さぶられて、自分ではどうしようもできないほど。
溢れる感情に後押しされるように、言葉が零れ落ちた。
止まらない。
「暁、私、ずっと待ってたの。暁と再会できるかもしれない、再会したいって祈りながら、ずっとずっと、気が遠くなるほどの奇跡を、待ってたの」
「俺も、奇跡が起きると信じて、ただそれだけを信じて、何度も壊れそうになったけど、それでも壊れたら伊織には会えないから、信じて生きてた。
いつか会えるって信じてた。
そのためだけに生きてたんだ。それでも半分、俺の体は死んでたけどな」

