未熟な恋人



そう、思いがけなく暁から告白されて、私は涙とともに初恋を成就させたんだ。

本当に嬉しくて仕方がなくて笑顔を弾けさせた私を、温かく笑いかけてくれた暁の顔。

今でもしっかりと覚えている。

暁という、私の人生に唯一存在している恋人。

本当に、大好きで、仕方がなかった。

私一人を大切にしてくれる真摯な視線も、穏やかに将来を見据えているところも。

そして何より、一緒にいるだけで私を幸せな気持ちにしてくれる、愛しい人だった。

ううん。

今でも愛しい人。

高校を卒業してから7年が経っても尚、私の唯一の想い人である暁が、今私の目の前に現れて、私を強く抱き寄せている。

「伊織……もう、離れたくない」

耳元に感じる暁の吐息に泣きそうになりながら、そっと、この身を暁に預けた。

瞬間、私の体に回されている腕の力が強くなった。

もう、逃がさないとでもいうように、気持ちのまま私を羽交い絞めにするように。

暁とこうして再会した事を、奇跡と考えるか、運命だと考えるか。

万に一つの偶然は、二人がそれを強く望んでいた気持ちが導いてくれたもの。

どちらにしても、私には信じられないほどの喜びで、この広い世の中の、それも思い出深い本の前で再会できるなんて。

「暁、暁……」

周囲の人たちが、好奇心に満ちた視線を向けている事なんてどうでもいい。

ぐっと抱きしめてくれる暁の体温が私に伝わってきて、私の感覚全てが彼に向かっていくようだ。

手にしていた鞄が足元に落ちる音を聞きながら、私も暁の背中に腕を回した。