女将と本館前で分かれ、
俺は杏花を連れ、少し離れた小屋へ。
「要?」
「ん?」
杏花は不思議そうにしている。
部屋へ入ると、既に温められていて
温泉の準備も整っていた。
「要、ここは?女将さんとも親しいみたいだったけど…」
「ん、ここは俺と俺の両親の隠れ宿なんだ」
「えっ?」
「さっきの女将さんは母さんの親友でね、ここへ嫁いだんだ。それから俺が生まれて、お祝いにってここを建ててくれたらしい。仕事が忙しかった両親と女将さんが少しでもゆっくり出来る場所が欲しくて…」
「……そうだったの…」
「ここ数年、仕事が忙しくて来れなかったけど、俺のとっておきの場所だから……杏花を連れて来たくて」
「……ありがとう」
「ッ!?おっ、おいッ!!杏花、どうしたんだよ」
杏花は涙ぐんで…
「大切なご両親の思い出に触れさせて貰えて……私…嬉しくて……」



