「ご自分で取りに来て下さい。俺は琉生とまだ話があるんです」
『………』
電話を切らない所をみると、
俺の様子を何処からか窺っているのか?
「俺にはもう、何も無い。そんなにも大事なものなら、ご自分で取りに来るといい!!」
俺は少し捲し立てるように
相手を牽制しながら電話を切った。
すると―――――、
2人が乗って来た車から、1人の男が降りて来た。
「一緒だったのか?」
「はい。俺が杏花さんと逃げると思って…」
申し訳無さそうな表情の琉生。
「……お前が悪いワケじゃない」
俺はほんの少し笑みを浮かべた。
琉生は元々優しい子。
後継者の争いも一番初めに手を引いた。
その琉生に……ここまで……。
俺は拳を握りしめ、
店内に入って来た彼を見据えた。



