「少し、落ち着いたか?」


「………ん」


「要には俺も会長夫妻も勿論カズ君も居るだろ?」


「……ん」


「しっかりしろ。要は一条を背負って立つ人間なんだからな?」


「…ん」


「奴らは汚い手を使うが、俺らは正攻法で行こうや……な?」


「ん」


「ヨシ!!」


沢田……いや、聡は10年前と何も変わっていない。


俺の1番の理解者で心から信頼出来る兄貴。


優しく微笑みかけ、頭を撫でられた。


「……ありがとう」


「いいえ、出過ぎた真似を致しました。お許し下さいませ……社長」


沢田のお陰で自分を見失わずに済んだ俺。


奴らは憎いし、許せない。


けれど、沢田は“一条の後継者”という


立場を踏まえた上での行動をしろと…。




パニック状態の俺の為に、


珈琲を淹れる彼の後ろ姿を眺めていた。