私が隙をついて殴ったとしても


きっと部屋の前で彼らに捕まるに違いない。


やっぱり私には“取引”しかないんだ。


それならとりあえず、聞くだけ聞いてみよう。


取引出来るかは分からないけど、


出来るだけの事はしないと…。


「あのっ……」


「ん?」


私が彼に話し掛けた、その瞬間。


―――――コンコンッ。


「ん」


カチャッ―――――。


先程の運転手の男が入って来た。


「戻られたようです」


「ホントか?」


「はい」


……戻る?……何のこと?


彼らの表情を見ていると、


「杏花さんも来てみる?」


「え?」