引き抜こうとしてもカズ君は手を放してくれなかった。

暴れても放してくれない。悔しいけどカズ君は大人だから力が強い。

なんかジタバタしてる自分が情けなくなってきた。ハナセヨー!とかコノヤロー!とか言ってる気がするけど、なんか自分で言ってる気がしない。

「しっかりしろよ。たっくん」

カズ君が痛いくらいに力をいれて握ってきた。

「リョウコさんの気持ちわかるだろ?」

もう。勘弁してよ。何で僕がそんな事言われんだよ。

僕が何したって言うんだよ。

いきなり家出されて、それでも我慢してご飯つくって掃除して、宿題だって終わらせて。

しかもいきなりガンとか言われて。

11歳で両親がいなくなるって。僕の人生って何なんだよ?

その時、カズ君がパッと手を放した。