この人さえ…どこかにいってしまえば





すぐにでも


美桜に会いに行けるんだけどな




そう思い、少し顔をあげて



気がついた。




さっきまであんなに



笑っていた男の顔は





どこか悲しげな




人間らしい表情にかわっていた。




そして、泣きそうな声で訴える。





「なんでっ……!!少し体の力をぬけばいいだけじゃないかっ!!!!それですぐに…楽になるんだろ!!?」



男は理解できないという顔で訴え続ける。



そんなに大きな声をだして、人は来ないのだろうか。




「なんでだよ…っ!!!楽になりたいとか!思わないのかよ!!」





楽に……か。




なりたいな。



なれるってんならなりたいよ。



でも




それ以上に



したいことがあるから。






どうしても




譲れないこと。




俺は




力をふりしぼり




ゆっくりと





言葉を紡いだ。






「ま……もり………たいから。」




男は目を見開く。





「生きて………戻っ…て…アイツの顔を………すこしでも…」





ここまで口にしたとき




男の目から




大粒の涙がこぼれたのがわかった。