「へー…本当に声出す気ないんだ。まぁ人が来てもらっちゃ困るし、好都合だけど?」



男はニヤニヤわらってる。



「逃げることもできないもんな?」



その通りだ。



走って逃げるほどの力もない。



そしてもう一つ




俺は察した。



もし俺が逃げようとしたら、




もし俺がこの扉から少しでも離れたら。






コイツは即座に、美桜を殺しに行くだろう。




不気味に笑うあいつの目から




嫌なほど伝わってきた。



俺の




『死』という逃げられない運命。





そして突きつけられた





悲しい現実





俺は…もうこれから美桜の顔を






一度でも







見ることはできないだろう。